血液学検査
赤血球数
赤血球は骨髄で作られ血液中に出て、細胞に酸素を運び二酸化炭素を受け取ります。赤血球数の増加する場合には多血症と診断され、減少する場合は貧血となります。
血色素量
ヘモグロビンは赤血球に含まれる蛋白で、酸素を運ぶ中心的な役割をしています。貧血の有無や赤血球増多症の診断に使われます。
ヘマトクリット値
ヘマトクリットは一定量の血液中に含まれる赤血球の割合を調べる検査で、貧血や多血症の重症度が判ります。
赤血球恒数(MCV、MCH、MCHC)
赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット値から算出される数値を赤血球恒数と呼び、貧血の原因や種類、性質を区別する情報となります。
白血球数
白血球は細菌などの異物が体に侵入しってくると骨髄で盛んに作られ増加します。また白血病などの血液のがんになると白血球が増加又は減少します。
白血球分類
白血球分類は血液中の白血球を好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球の5分類に分類算定する検査です。病気により各々の種類の白血球の百分率が変化します。また白血病の場合、健常者では出現しない幼若細胞が現れます。
血小板数
血小板は出血した時に血栓を作って血を止める働きをします。血小板数の減少や機能の低下が起こると、出血しやすくなったり出血が止まりにくくなります。
血清鉄
鉄はヘモグロビンを作る材料となるため、摂取量不足や体外に失われる量が多くなると血清鉄が低くなり鉄欠乏性貧血となります。鉄欠乏性貧血は貧血の中で最も多く特に女性に多い貧血です。また摂取量が多くなると鉄過剰状態となり臓器沈着が見られます。
不飽和鉄結合能
血清中では鉄は全てトランスフェリンという蛋白に結合しています。トランスフェリンにあとどれくらい鉄を結合できるかを示すのがUIBCです。
鉄欠乏性貧血ではUIBCが高くなります。
血液型(ABO、Rh)
血液型には大きくABO血液型とRh血液型の二つがあります。ABO血液型の日本人の割合は、A型40%、B型20%、O型30%、AB型10%となります。Rh型はD抗原の有無で区別し、持っている人をRh(+)、持っていない人をRh(-)とします。日本人でRh(-)の人の割合は0.5%です。
脂質代謝検査
総コレステロール
総コレステロールは動脈硬化性疾患の危険因子として重要視されています。コレステロールや中性脂肪の増加による脂質異常が長く続くと、心臓の冠動脈硬化や脳動脈硬化を起こしやすくなります。総コレステロールは糖尿病、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群などでも上昇します。
HDLコレステロール
HDLコレステロールは高比重リポ蛋白に含まれるコレステロールで、動脈内壁に付いたLDLコレステロールを取り除く働きがあります。HDLコレステロールが低いと動脈硬化性疾患の発症リスクが高くなります。HDLコレステロールを下げる原因として喫煙、肥満、運動不足、糖尿病などがあります。今は高すぎるHDLも問題ありとされています。
LDLコレステロール
LDLコレステロールは低比重リポ蛋白に含まれるコレステロールで、活性酸素などで酸化され変性したLDL血管内壁のレセプターに結合し動脈硬化を進行させます。変性LDLやその元となるLDLコレステロールが高いと動脈硬化性疾患のリスクが高くなります。
中性脂肪
体内にある脂肪の一種でエネルギーとして使われますが、余ったエネルギーは皮下脂肪や内臓脂肪の形で中性脂肪として蓄えられます。中性脂肪が高値を示す最大の原因は肥満で、食べすぎ、運動不足、飲酒はその要因となります。中性脂肪の上昇とHDLコレステロールの低下は冠動脈疾患のリスクを上昇させます。
LDL/HDL比
血液中のLDLコレステロールとHDLコレステロールの比で算出した指標で、比の値が高くなると動脈硬化性疾患である心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高くなります。
糖尿病検査
血糖
インスリンの分泌不足または作用不足により血糖値が上昇し糖尿病を発症します。糖尿病の最も重要な指標は血糖値で、食事の影響を受けるため空腹時血糖を測定し糖尿病の有無を判定します。
尿糖
血糖の濃度が一定限度(約170mg/dl)を超えると、腎臓での再吸収が追いつかず尿に糖が出てきます。尿糖が陽性の場合、糖尿病が疑われます。
HbA1c
赤血球中のヘモグロビンの一部とブドウ糖が結合したものをHbA1cといい、血液中のブドウ糖が増加するほどHbA1cも高くなります。HbA1cは過去1~2カ月の平均的な食前食後血糖値を反映し、直前の食事の影響も受けないため糖尿病検査項目として必須の検査になっています。
インスリン、HOMA-R
HOMA-Rは空腹時のインスリンと血糖値から算出される指標で早期の糖代謝をよく反映します。(HOMA-R=インスリン×血糖÷405)
内臓脂肪の蓄積によりインスリンの効きがゆるくなる(インスリン抵抗性)と、インスリンが多く分泌されるようになりHOMA-Rが上昇します。HOMA-Rは血糖やHbA1cに比べ非常に早期の糖代謝異常を捕らえますので、HOMA-Rが少し高くなった段階で生活習慣を早く改善すれば糖尿病を予防することが可能になります。
膵機能検査
血清アミラーゼ
主に膵疾患のスクリーニング検査として用いられます。急性膵炎などの膵疾患や急性耳下腺炎などの唾液腺疾患、腎機能障害などで上昇します。
肝機能検査
総蛋白
血清中の蛋白は80以上の異なった成分で構成されています。総蛋白の増加や低下が見られた場合は、精密検査として蛋白分画や個々の蛋白成分の定量検査を実施します。
アルブミン
アルブミンは血清蛋白の50~70%を占める蛋白で、肝臓で合成されます。蛋白摂取不足、吸収不全、肝臓での合成低下、腎臓からの蛋白濾出などで低下します。慢性肝障害が悪化した場合やネフローゼ症候群などでアルブミンの低下がおこります。体の栄養状態のモニター項目としても利用されます。
A/G比
アルブミンと総グロブリンの比を表します。肝障害が進行した場合や腎障害でA/G比は低下します。
総ビリルビン
血清ビリルビンは溶血による産生過剰(溶血性貧血)や肝炎、胆石などの肝胆道疾患で上昇します。疾患の診断や黄疸の鑑別に重要な検査です。
AST(GOT)、ALT(GPT)
ASTは心臓、肝臓、筋肉の細胞に存在しALTは主に肝臓の細胞に存在する酵素です。まずALTが上昇する場合には脂肪肝が、そしてASTとALTが共に上昇する場合は肝疾患が、ASTのみが上昇する場合は心筋や骨格筋の障害が疑われます。
γ-GT(γーGTP)
γ-GTは肝炎、アルコール性肝障害や胆汁うっ滞などの肝・胆管疾患で特異的に上昇する酵素です。飲酒の影響を大きく受けるため、他の肝機能検査が正常でも、1日2合以上の常習飲酒者では明らかに高値を示します。約2週間の禁酒でγ-GTの値は半減すると言われています。
LAP
肝臓や胆道の病気に指標としてALPやγ-GTとともに測定され、各々の値の関連性を見て診断を行います。肝障害や胆汁うっ滞時に上昇するほか妊娠末期にも胎盤由来のLAPが上昇します。
LDH
全身のあらゆる組織に存在する酵素で、臓器特異性は低いがスクリーニング検査として活用される項目です。肝疾患、心疾患、血液疾患、筋疾患、自己免疫疾患などで上昇します。
コリンエステラーゼ
肝臓で合成される酵素で、肝実質障害性の疾患において低下します。特に慢性肝炎や肝硬変が進行するとアルブミンとともに低下が顕著になります。脂肪肝、ネフローゼ症候群、甲状腺機能亢進症では高値になります。